文献道傳説(書籍等)

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    「ありがとう実験動物たち」(岩崎書店)を読んで
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      画像の上に見えるのは、気になってしるしをした、付箋紙です。



      今回、岩崎書店刊の「ありがとう実験動物」を読んで、我々の間で様々な意見が飛び交っている様ですので、主観的ではありますが、読後の感想を思いつくままに書こうと思いました。

      表紙カバーの裏には、『実験動物をお世話するひとりの女性の物語。彼女は言いました。「この本は実験動物たちの生きた証です」と。』書いてあります。
      そして、ブタ君を入浴させている女性の写真が載せられています。
      ブタ君の大変に気持ちよさそうなお顔、その女性も何の曇りもないきれいな表情をしていると感じました。

      さて、我々が望むものは、現代の動物実験が全て必要なのか、どうかと言うことです。

      はじめに、には『この本は「動物実験」そのものを否定したり、批判したりするために書いたものではありません。・・・・・あなたにもぜひ知って欲しいのです。わたしたちの毎日の生活に、「実験動物」が深くかかわっていることを。』と書いてあります。

      実際に全て渡って、動物実験の是非を問うような記述は見当たりません。
      あるのは、実験動物にいかに快適に、いかに幸福に、いかに苦しみや痛みを少なく過ごさせてあげることが出来るかを実践していく主人公の姿です。

      結果的には、動物実験とは何か、または動物実験を考えると言うよりも、動物実験の実験動物の福祉を考えると言う内容が色濃く出ている本だと思います。

      はじめに、にある様に動物実験という物があり、それを一人の主人公を介して知るという面では、恐らく何も知らない一般の読者層を目指した内容であると思われます。
      これによって、動物実験という物があり、我々の生活に深く関わっている事を理解したとしても、残念ながら、もう一歩踏み込んだ、その先がありません。
      その一歩先がないと言うのは、動物実験が何のためにやられているかの事に人間の病気の研究のことしか書いていないからです。
      要するに不要であろう、化粧品や日用品やその他様々なことにも動物実験が行われていると言う事にまでは全く触れられていません。

      主観的に考えるならば、内容的に我々にとっては大変に不足であり、何も知らない一般の読者層にもちょっと物足りないと言う感じだと思います。

      さて、それでは気になった記述などに関して見ていきたいと思います。

      第1章には実験動物たちの事が書かれています。
      そこで、主人公がどう扱っているのかが主に記述されています。

      特に動物実験で多く用いられる、マウスの項では、『マウスにも人間の気持ちは通じるのです。』(P.13 )と書いています。

      こんな事は我々であれば、書かなくともわかる事ですが、一般の読者層に向けたとしたら、書かざるを得なかったのでしょうか。

      それほどまでにして、実験動物の飼育環境の改善を実践し、動物たちと気持ちが通じ合うまでになっていたにも関わらず、実験という物への疑問がわかなかったと言う心理は主観的に考えるならば、全く考えられない事です。

      この一言と、結果的にやっている事のつじつまが合いません。


      P.14 にはこんな事も書いてあります。

      『一つの目的が成功するまで、多くの実験がなされ、また失敗することもあります。そして、実験が終われば、動物は殆どの場合安楽死処分されるのです。この施設では実験動物の死体を一時的に冷凍庫で保管し、週に1〜2回、専用焼却炉にて焼却しています。』

      ここに書いてある、一つの目的とはいかなるものなのかと言う事に関しては書かれていません。
      ただ、想像を絶するほど多くの動物たちが犠牲になると言う事です。
      一般の読者層に具体的な動物の数を一つの例としてでも示して欲しかったです。
      そうすれば、動物実験とはいかにおぞましい物か、少しでも気にする人が出てきたことでしょう。
      ただ、この本の主旨から必要ないことでもあるので、書かれなかったと言う事なのだと思います。
      また、「安楽死」とも書かれていますが、この本全てに渡って、この「安楽死」という言葉がいやに強調されているように感じます。
      実際に処分方法に関しては、本当にそうなのかは様々な実態から見て、全く信用出来ない記述であると思われます。


      P.17にはこんなことも書いてあります。

      『研究者はヒトや動物の健康の増進や科学の発展の目的のために、時に実験で動物に痛みを与え、ほとんどの場合実験が終わると安楽死させなければなりません。・・・・・研究者も生きている動物を実験することに対して、何の痛みも感じていない訳ではありません。』

      ここでも「安楽死」という言葉が強調されています。
      また、研究者に関しての記述ですが、何の痛みも感じていないからこそ、実験が出来るのであって、この記述は間違いだと言う事が出来ます。
      医学・科学の発展という、大義名分を盾にして、繰り返し生きた動物を犠牲にしているのです。
      研究者にとって、少なくとも実験動物は単なるモノであり、そこに人間としての本来の感情はないと考えられます。
      この記述は実験は人間としてもつらい、しかし医学・科学の発展のためにはやらなければならないと言う研究者を表面に出す事によって、一般読者層に動物実験の正当性を暗に訴えた文章でしかないと感じます。


      P.18では

      『研究者は感情をおし殺して、よりよい研究結果を出すことに集中します。それは犠牲になる動物たちへの報い(恩返し)と感謝につながるのです。』

      動物たちは研究の犠牲になって本望だ、これで医学や科学が発展するのであれば、何もいらないなどとは全く思っていません。
      動物たちの願いはただ一つ、「生きたい」と言う事です。
      ここに書いてあることは、人間が勝手に思っているだけの事であって、犠牲に対して、よりよい研究結果が出たとしても恩返しにも繋がらないし、感謝などしても全く意味がないと言うことになります。

      こういうのを動物実験かぶれとうちは思っています。
      何でも人間の良い方向へと解釈しようとする、人間の一番悪いところです。


      P.20では、医療関係者のインタビューが書かれています。

      『実験目的で育てられた動物を実験に使うことは、あまり抵抗はない。』と答える技術者の言葉が書かれています。
      これはそのもの如くなのだろうなと思います。
      いや、実験目的で育てられた動物だけではなく、全ての動物に関してではないのかと。


      P.24には実験動物ブリーダーの言葉が書かれています。

      『”動物愛護”の気持ちを犠牲にしてでも、たとえ、”動物実験=絶対悪”とみなされても、ヒトが生きるために、研究せねばならないこと、前進せねばならないことが山ほどあるという事実を知った上で、動物実験が本当に必要か、そうでないのかをみんなで考えて欲しい。』

      やはり、ブリーダーは単にブリーダーでしかありません。
      この言葉を本に載せてくれて、主観的にはこの本の良いところを見たように思います。
      しかし、何も知らない一般読者では納得してしまうでしょう。この本質が見抜ける人は一体どれだけいるでしょうか。
      全く根本からして誤った考え方でしか、ありません。


      そして、そのいくつかのインタビューの締めにはこう書いてあります。

      『実験動物や動物実験に携わる人は、立場はそれぞれ違っていてもプロとしての強い信念を持って、真剣にいのちに向かい合うことに、違いはありません。』

      これはどうでしょうか。
      大変な疑問です。
      また、良くもこんな言葉が書けたものだと言う気もしてきます。


      その後、本はブタ君に関する事、ビーグル君に関する事へと進んでいきます。
      主人公が出来るだけ実験動物に快適に、幸せに、楽しく、過ごさせたい一心で献身的に世話をして行く姿が描かれています。

      しかし、それはどちらかと言うと方法論に半ば終わってしまっているのが残念です。
      鎮痛剤投与であるとか、様々な薬の与え方であるとか、慣れさせ方であるとかの方法論です。

      主人公は動物たちに慣れさせて、結局はなかなか難しい、鎮痛剤や麻酔剤の注射もたやすく行い、実験へと動物たちを送っていきます。

      献身的に世話をすることは非常に素晴らしいことであり、また動物の福祉の向上にも繋がることではありますが、結局は動物たちに信頼させておきながら、裏切ると言う結果となっていることは否めません。

      そこに心理的に理解しがたい部分があります。

      また、主人公は実験動物の福祉において、数々の論文を発表して、その発展に寄与したことも事実でありますが、やはり実験動物は実験動物であって、主人公にとっては、それ以上でもそれ以下でもなかったと言うことだったのではないかとも感じられます。


      P.79にはこう言う言葉もあります。

      『・・・元気に任務を終えてくれました。』

      要するに実験動物を実験に送って、死を迎える事を言っているのだと思いますが、「任務」とは少しおかしくはないでしょうか。
      ここでの実験動物はブタ君です。


      中には、実験によって、半身不随になってしまった、ビーグル犬を見捨てずに世話をしたことも描かれています。
      助かる道があれば諦めない、この姿勢は当然のことながら評価をしたいと思います。
      実験動物は実験が終わったら、全て「死」を持って終わると言う常識を覆したとも感じられます。


      P.92には主人公の言葉が出ています。

      動物が最期を迎えるとき、それほどの苦痛ではないと言っています。

      そして、『むしろ、安心すると言った方がういかもしれません。この安心には、二つの気持ちがあって、ひとつは、これによって、動物が苦痛から解放される安心、そして、もうひとつは、実験動物が無事に実験結果を残してくれたことの安心です。』と。そして、「わたしたちのために、ありがとう。」

      この意識も理解がしがたいとしか言いようがありません。
      それでは、何故その以前に立って、動物実験とは本当に必要なのかと言う事を考えなかったのでしょうか。
      そして、最後にはありがとう、で済ますことの出来る心理が全く理解出来ないと思います。


      P.105では、「動物実験施設で仕事をすると言う事」の項の中に主人公がこう言っています。

      『ヒトは動物のいのちを犠牲にしなければならないと言う悲しみを背負って生きています。それを社会に代わって引き受けているのが、わたしたち動物実験の関係者なのだと思います。自ら望んだわけではなく、実験動物の運命を背負わされた動物たちに、自分が出来ることは、短い一生うちに、今まで経験したことのない、安心で快適な一時を味あわせてあげる事です。』

      さて、どうでしょうか。
      前半は全くおかしな事です。
      動物実験が我々の生活になくてはならない、そして、当たり前のように受け取られてしまいます。
      実際はそうではありません。

      後半は前半が成り立ってのみ成立することであり、動物実験がなくなれば、その必要性もなくなるのです。







      巻末には、付録として「なぜ、動物実験をするの?」と言うQ&Aがあります。

      P.130には何故実験をしなければならないのかが書いてあります。

      『そもそも、このように激しい痛みを伴う実験はなぜしなければならないのでしょうか。それはヒトに発症する病気の治療法を研究するためには、まずその病気や症状を動物に再現しなければならない、と言う事情があるためです。』


      P.135にはとある大学での動物実験の管理に関して書かれています。

      実験計画⇒4時間の教育受講となっています。
      しかし、この4時間の教育で、3Rを含めた動物実験倫理、動物福祉、動物の感染症からの防護の知識、動物の苦痛を軽減するための麻酔や安楽死の方法、動物実験に関する規定と盛り沢山の事が盛り込まれています。

      さすが!と思いました。
      良い意味からではありません。

      たった4時間でこれだけの事を完全に理解するべく出来る訳がありません。

      それよりも、たった4時間の教育で実験に着手出来るなど、生命を扱うのにあまりに短すぎます。
      こういったところに、動物実験のいい加減なところ、形だけの教育と言う物がはっきりと見えてきます。

      管理人の仕事では様々な機械類を使用しますが、その機械一つ取っても扱うには最低でも丸1日、普通は丸2日の講習を受けなければ、その機械に触ることすら出来ません。
      要するに機械の取り扱いでさえも、少なくとも8時間、普通は16時間もの教育をするのです。

      生命を扱うのにたった4時間とはあまりに馬鹿にしすぎているとしか考えられません。





      【結論】

      この本は何も知らない一般の読者が読んだら、もしかしたら感動的な物語にもなり得るかも知れません。
      そして、動物実験と言う物があり、人間が生きて行くには切っても切れない、必要不可欠なものであるとも理解するだろうと思われます。

      しかし、我々が読むには、全く不足である事も否めません。

      期待していた、「動物実験を考える」事ではなく、「動物実験の実験動物の福祉を考える」と言う内容になっています。
      動物実験ありきの、実験動物への福祉に貢献した主人公が描かれています。

      当時のこの主人公の勤務していた大学の動物実験施設の実験動物への扱い、福祉は多分にしてかなり悪かったのではないかと容易に想像が付きそうです。
      こう言った、悪環境の中から主人公のような技術士が誕生したという背景もある物と思われます。

      主人公の実験動物への福祉、献身的な努力は物語内でも見て十分の評価出来ることですが、残念なことに方法論で終わってしまっていて、意識の中では実験動物は実験動物であって、それ以上でもそれ以下でもないと言うことであったと感じられました。

      そのために、福祉は考えても実験を考えると言う事までには当然に思いつきもしないし、至らなかったのではないかとも思います。

      物語中に様々に気になる記述が多くありました。
      それに関して、主なものだけ引用しましたが、まだまだ多くある状態です。

      人それぞれ思うところは違うと思いますが、主観的に感想を列記してみました。












       
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